今回、我々が深淵を覗き見るのは、あるスレッドで語られた「生きててごめんなさいメーター」という言葉だ。これは単なるネットスラングではなく、深刻な自己否定と罪悪感が臨界点に達し、精神的危機に陥る状態を的確に表現したメタファーと言えるだろう。スレ主がリアルタイムで綴るパニック発作や「反芻思考」の苦悩、そしてそれに対する匿名空間の反応は、現代社会が抱える「生きづらさ」の一端を映し出している。
導入:突然のSOS、メーター爆上がりの瞬間
パニクりそう
死にたくない
きてる
なにがくるねん笑
…ひゃばい、ちょまって…あかん!あかん!やばい、やばい!ガッ!やばい!!!あかん!!!アッ ちょまって、やばい、まじで、クッ、落ち着け、クッ、ハッ、やばいっ…く、くる…!
スレッドは、スレ主(イッチ)の切迫したSOSから幕を開けた。「生きててごめんなさいメーター」が爆上がりし、パニックに陥りそうな状況をリアルタイムで投稿するイッチ。その叫びに、一部のレスは軽口で返すが、中にはイッチのパニックを模倣するような、独特の共感を示すレスも現れる。この時点では、まだこのスレッドがどこへ向かうのか、誰も知る由もなかった。
深まるパニックと反芻思考のループ
飲まなくても死なんならええやん笑
怖い怖い怖い怖い
あかんあかんあかんあかん
ふざけてるやん
女だせよ
はやく女だせー!
どえせパニくらない
本気だからこうなる
≫30
もう下がったやろ?
いや、まだ落ち着かない
反芻思考がとまらん
本気と書いてマ
反芻思考をやめよう
反芻思考をやめよう
反芻思考をやめよう
どうでもいいどうでもいいどうでもいい
なんとかなるなんとかなるなんとかなる
あれ発狂しないようにバランスとってるだけだから
うううううううううううううううう
叫んだらダメ叫んだらダメやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ辞めろ辞めろ辞めろやめろやめほやめろー
やーーーめーーーろーー!
どうやらイッチは、服薬を中断していたようだ。そして、その結果としてパニック発作と「反芻思考」に苦しんでいることが明らかになる。反芻思考とは、過去のネガティブな出来事を繰り返し考え続けてしまう精神的習慣で、うつ病や不安障害の発症リスクを高めることが知られている。イッチが「電車で独り言」でバランスを取っていると語る様子は、その切実さを物語っている。
理解されない苦悩と匿名空間の現実
ワイは普通のまともでーす
なんで自分で自分を傷つけようとするんやろう
なにがしたいんやろう
どういう現象なんやろう
途中何回も降りて落ち着くまでじっとしてなあかん
ワイ結構ガイジ入ってると思うけど医者にすら理解されん
ガイジなんです自分電車とかでもパニックになって怖いんです
って言ってもあなたは別に?みたいな反応
診断書くれとも言ってない
ただ生きやすくする何かを探してるのに
なんで事象すら信じてもらえない
否定される
病気とかじゃなく、性格がキモいだけ
キモくてもいいから生きやすくしてほしい
つかおい、否定すんなよ
否定すんな
ワイのこと否定すんな
今まで十分否定してきただろ
もう否定すんな否定すんな
やめろや
意味あんのかそれ
なああまたそうやって余計なこと言うから
過去いじめられたり詰められたトラウマ蘇っちゃったぢゃん
自分が同じこと言おうとしてハッとなるやーつ
ぷぴぷぴぷぴ
自分が欲しいレスにしか返さないからすぐわかるわ
アドバイスなんかできるわきゃねーだろバーカ
てめえごときが
発作時に電車を降りて落ち着くのを待つ必要があるほど、イッチの苦悩は具体的かつ深刻だ。さらに、「処方箋の看板が処刑に見える」という表現は、その精神状態の過酷さを物語っている。しかし、医者にすら理解されないという現実が、イッチをさらに追い詰める。そんな中で投下された「性格がキモいだけ」という辛辣なレスは、火に油を注ぐ結果となった。匿名掲示板の闇が垣間見える瞬間だ。
哲学的な諦念、そして物語の終焉
なんgに限らず匿名掲示板が廃れたからどこも過疎ってガイジ率爆上がりしとるからしゃーない
親が始めた物語なんだから気にすんな
多少の不便を我慢して生きる権利
矛盾しているんだそこから
そらそうだろ
資本主義において資産の無い奴は奴隷なんだから
最初からただそれだけだった
成功も失敗も苦も楽も憎も愛も
すべては空あーなるほどね
こういう感じね
罵倒や冷笑が飛び交う中で、イッチは次第に哲学的な境地へと至る。彼の問いに対し、「親が始めた物語」「資本主義の奴隷」といったレスが、さらに思考を深めさせたのかもしれない。最終的に「すべては空」という諦念にも似た境地にたどり着いたイッチ。この結末は、救いなのか、それとも自己破壊の前兆なのか。デジタルのテキストだけでは、人の心の深淵は計り知れない。
知的好奇心
「生きててごめんなさいメーター」という言葉は、単なる感情の落ち込みではなく、自分の存在そのものが他者への迷惑であるという深い罪悪感に基づいた、精神的危機状態のメタファーです。この感覚は、太宰治が自身の著作の副題に引用した「生れて、すみません」という言葉にも通底し、日本社会に根深く存在する自己責任論や同調圧力の文化的背景を垣間見せます。
スレッド主が苦しんでいた「反芻思考」とは、過去のネガティブな出来事を繰り返し考え続けてしまう精神的習慣です。これはうつ病や不安障害の発症リスクを高めることが知られています。
また、電車で何度も降りて落ち着くまでじっとしていなければならないという記述は、パニック障害の典型的な状況と重なります。パニック障害では、予期せぬパニック発作が繰り返し起こり、それに伴う不安から日常生活に支障をきたすことがあります。
スレッド主が「医者にすら理解されない」と語る点は、診断名がつかない、あるいは非典型的な症状を持つ人々が、既存の医療システムの中で孤立しがちな現実を反映しています。これは、現代人が抱える「生きづらさ」と、それを受け止める社会の機能不全を映し出す、象徴的なケーススタディと言えるでしょう。
関連リンク
※本記事は掲示板の投稿をまとめたものであり、その内容は個人の意見に基づいています。
