人気アイドルXG・COCONA、ノンバイナリー公表と胸部切除手術の告白が呼ぶ波紋

K-POPとヒップホップを融合したグローバルガールズグループ「XG」のメンバーであるCOCONA（ココナ）が20歳の誕生日に自身の性自認について公表しました。生まれつき割り当てられた性別が女性（AFAB）でありながら、自身の性自認が男性・女性という二つの性別のどちらにも明確に当てはまらない「ノンバイナリー」であると明かし、さらに胸部の切除手術を行ったことも告白。この発表は、アジアのポップカルチャー界に大きな波紋を広げています。

【前提知識】ノンバイナリーとは

COCONAさんの公表は、出生時に女性と割り当てられた（AFAB）方が、男性・女性の二元的な性別の枠にとらわれない性自認を持つ「AFAB Transmasculine Non-binary」というアイデンティティを表明したものです。ノンバイナリーとは、性別を男性または女性の二択のみで分類する「ジェンダーバイナリー」にとらわれない多様な性自認を指し、そのあり方は多岐にわたります。

【これまでの経緯】異例の公表とその反響

COCONAさんは、20歳の節目に自身の心の奥にあった想いを打ち明け、胸部切除手術を行ったことを明かしました。この告白は、自身の身体と性自認の一致を求める過程での決断であり、彼女を支えたメンバー、プロデューサー、そして両親への感謝も表明されています。このニュースは、多くのファンや関係者から支持を得る一方で、インターネット上では様々な意見が交わされ、性自認や身体的移行に対する社会の複雑な視点が浮き彫りになっています。

COCONAさんの告白に対し、ネットでは「精神的な病」や「後悔する未来」を危惧する声が散見されます。身体への加工行為から「歪んで育ったのではないか」という深読みも飛び出し、その背景にある心理への関心が伺えます。古くはアマゾネスの伝説から「乳なし」という意味が派生したという話まで、胸部切除という行為が持つ象徴的な意味合いに触れる者も現れました。

「ノンバイナリー」という言葉の解釈から、男性が女性の身体を持つことへの願望、あるいはその逆の感覚まで、様々な視点が交錯します。特に、「女性として見られることに強い違和感があるにもかかわらず、なぜガールズグループに所属しているのか」という矛盾を指摘する声は、彼女の選択が社会においてどのように受け止められているかを如実に示しています。身体と心の性別のズレが、個人のアイデンティティと社会的な役割の間で葛藤を生んでいる現状が浮き彫りになりました。

性自認の公表と身体的移行は、エリオット・ペイジの事例のように、近年注目を集める現象です。しかし、その背景には「売名行為ではないか」という芸能界における戦略的な側面を指摘する声や、「社会的な影響を受けやすい人々が安易に追従しているのではないか」という懸念も存在します。手術の詳細に関する問いや、LGBTQ+に関する認識のズレも明らかになり、この問題の複雑さが改めて浮き彫りになっています。

女性から男性への身体的移行は、社会的な困難が増すという現実が指摘され、「たぬかな」発言を引用して身体的特徴と社会的評価の関連性を論じる意見も現れました。また、性別適合手術のような「不可逆な手術」への警鐘や、将来的に気持ちが変わった場合の懸念も多く、個人の決断が社会に与える影響、そしてその決断を支える環境の重要性が問われています。「心が男ならおっぱいを大切にするはず」という意見は、性自認と身体の在り方、そして社会が抱く性のステレオタイプとの間で、複雑な議論が展開されていることを示しています。

【深堀り】性別適合手術後の後悔率と心理社会的影響

後悔率は極めて低い: COCONAさんの胸部切除手術公表に対し、スレッド内では「後悔するのではないか」という懸念が複数上がりました。しかし、複数の研究や報告によると、性別適合手術（SRS）後の後悔率は非常に低いとされています。特にFTM（Female-to-Male）の胸部切除手術後の後悔率は1%未満、または中央値0%とする調査結果も報告されています。オランダでの大規模な長期追跡調査でもFTMで0.3%、MTFで0.6%と低い数値が出ており、包括的なレビューでは全体で約1.94%（FTMで0.8%、MTFで約4.0%）とされています。

心理社会的変化と生活の質の向上: これらの手術は、身体との繋がりが強まることで安定感や快適さが増し、生活の質の向上に寄与することが示されています。性別違和の症状を軽減し、精神的健康、特にはうつ病症状の軽減や対人関係の改善にも良い影響を与える可能性があります。術後の対人関係や社会的機能の改善は、他者による個人の受容や受け入れが容易になることに関連しているとの指摘もあります。

決断の背景と課題: 手術を決断するFTMの多くは、思春期以前から長い時間をかけて悩んできた末に決断に至るため、「勢いで決めた」というケースは稀であり、「やって後悔」より「やらなくて後悔」の方が多い傾向にあるとされています。ただし、後悔の理由としては、性別違和の診断不足、実生活でのテストの失敗、手術結果の不満などが挙げられることもあります。また、ノンバイナリーのアイデンティティは多様であり、身体的変化を望む程度も個人によって異なります。

知的好奇心

AFAB Transmasculine Non-binaryというアイデンティティの深層
COCONAさんの公表した「AFAB Transmasculine Non-binary」というアイデンティティは、出生時に女性と割り当てられた人が、より男性的なアイデンティティを持つか、あるいは男性・女性という二元的な枠組みを超えた性自認を持つことを指します。これは単に「心が男」という単純な表現では捉えきれない、多層的な自己認識を示唆しています。この複雑な性のあり方は、社会がこれまで認識してきた「性別」の概念を大きく揺るがすものであり、個人の内面に存在する多様なジェンダーを理解するための鍵となります。

K-POPとLGBTQ+表象の進化
アジアのポップカルチャー、特にK-POPは、そのグローバルな影響力により、LGBTQ+の表象においても新たな段階を迎えています。COCONAさんの公表は、この潮流の中でアジアのアイドルが自身のジェンダーアイデンティティを公に表明する先駆けとなり、既存のジェンダー規範に挑戦する勇気ある一歩と言えるでしょう。これは、多様なファン層に向けてより包括的なメッセージを発信し、社会全体におけるLGBTQ+の可視化と受容を促進する可能性を秘めています。