【独自】立憲民主党都議、性的指向公表の波紋 「パンセクシュアルです」が問いかける社会の現実

2025年12月10日、東京都議会において立憲民主党の東由貴議員が自身の性的指向を公表した。彼女は自身がパンセクシュアルであると明かし、その体験を政策に繋げたいと訴えた。この一連の出来事は、現代社会における性の多様性と、それに対する人々の意識の複雑な様相を浮き彫りにしている。当ブログでは、この公表が投げかける波紋と、それに続くネット上の反応をジャーナリストの視点から深く掘り下げていく。

前提知識・背景

立憲民主党の東由貴都議会議員は、2025年12月10日の東京都議会一般質問で自身がパンセクシュアルであることを公表しました。パンセクシュアルとは、相手の性のあり方に関係なく人を愛する性的指向を指します。看護師や品川区議を経て、今年6月の都議選で初当選した東都議は、自身の体験を政策に繋げたいという強い思いから公表を決断。性の多様性を巡る課題を指摘し、特に2022年11月に導入された東京都のパートナーシップ宣誓制度の実効性について疑問を呈しました。これは、性的マイノリティ当事者としての視点から、「誰一人取り残さない社会」の実現を訴えるものです。

東都議の公表に対し、ネット上では早くも賛否が渦巻いている。「選挙向けのマイノリティカード」と政治的意図を指摘する声や、「変態」と感情的に拒絶する意見も散見される。公の場で自身の性的指向を語ることへの社会の抵抗感が、根深く存在していることを示している。

「パンセクシュアル」という言葉に対し、一部では「パン（bread）」と結びつけての安易な揶揄が見られる。これは、性的マイノリティへの理解の浅さを示すと同時に、言葉の定義が一般に浸透していない現状を浮き彫りにしている。真剣な議論を阻害するこのような反応は、社会が乗り越えるべき課題だろう。

LGBTQ+といった性的マイノリティのカテゴリーが細分化される中で、その概念への混乱と嫌悪感が浮き彫りになっている。特に、性別とは異なる概念（アライ、ポリアモラスなど）まで同一視されることに対し、「もはや意味不明」という声が多数を占める。この現象は、多様性の受容が進む一方で、その定義の曖昧さや過度な拡大が、かえって反発を生む可能性を示唆している。

公表の意図が「誰一人取り残さない社会」の実現にあるにもかかわらず、多くのネットユーザーは「なぜ今、議会で？」「政治と関係ない」と反発している。中には「セクハラだ」「露出狂」といった強い言葉で批判する声もあり、公表者の意図と受け取り手の間に大きな乖離が生じていることが見て取れる。この状況は、性の多様性に関する社会的な対話の難しさと、公人による個人の情報開示がもたらす複雑な影響を浮き彫りにしている。

【深堀り】東京都パートナーシップ宣誓制度の光と影

制度の概要と目的: 東京都が2022年11月1日に導入したパートナーシップ宣誓制度は、性的マイノリティのカップルが都にパートナーシップ関係を証明する受理証明書を交付するものです。この制度の目的は、性の多様性への理解を深め、性的マイノリティの方々の生活上の困りごとを軽減し、より暮らしやすい環境づくりに繋げることにあります。

制度のメリット: 受理証明書が交付されることで、都営住宅への入居申込や都立病院での入院中のパートナーとの面会などが可能になります。実際に、2024年5月31日時点までに1222組のカップルがこの制度を利用しています。

残された課題: しかし、この制度は婚姻制度とは異なるため、配偶者控除のような税制上の優遇措置や、法定相続人としての権利は認められていません。東都議が指摘したように、都が紹介する入院中のパートナーと面会できる医療機関は、調査対象の1割にも満たない60施設に留まり、制度の実効性には疑問符が投げかけられています。また、制度が未導入の自治体も存在するため、転居のたびに手続きが必要となる問題も発生しています。ジャーナリストの北丸雄二氏は、パートナーシップ制度を「同性婚の通過点」と捉え、最終的な法的な婚姻の平等の必要性を訴えています。

知的好奇心

「パンセクシュアル」の語源と深い意味
「パンセクシュアル」の「パン（Pan-）」は、ギリシャ語で「すべて」を意味する接頭辞に由来しています。これは、相手の性別や性自認といった特定のカテゴリーにとらわれず、「その人自身」に惹かれる性的指向を指します。つまり、男性、女性、トランスジェンダー、ノンバイナリーなど、あらゆる性のあり方を持つ人々に魅力を感じるという点で、バイセクシュアル（主に男性と女性に惹かれる）とは一線を画します。この言葉の背景には、性の多様性をより包括的に捉えようとする現代社会の思想が反映されていると言えるでしょう。

政治家によるカミングアウトが持つ二重の刃
政治家が自身の性的指向を公表することは、性的マイノリティ当事者の声を政策に反映させる上で大きな意味を持ちます。実際に、東都議もパートナーシップ宣誓制度の実効性を問い、「誰一人取り残さない社会」を訴えています。しかし一方で、公の場で自身の「性癖」と受け取られかねない情報を開示することへの強い反発もまた現実です。この「公」と「私」の境界線が曖昧になることで、「政治の私物化」や「注目集め」といった批判に繋がりやすく、カミングアウトは社会の分断を深める可能性も秘めているのです。